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Leaf&Key仮想戦記〜ひとりぼっちの戦場編〜

1 :名無しさんだよもん:01/12/19 14:32 ID:f++AOMVJ
過去スレ

Leaf&Key仮想戦記〜永遠の遁走曲篇〜
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=989927173

Leaf&Key仮想戦記 〜誰彼の葉鍵編〜
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/974/974402008.html

Leaf&Key仮想戦記第一部 (2ちゃんねる葉鍵板リレー小説置き場)
http://nanasei7.tripod.co.jp/

本文は>>2から

45 :名無しさんだよもん:01/12/22 15:45 ID:cxtJHp6T
>>44
もともとリレー小説だしいいんじゃないかな?
これまでには分岐することもあったと思うんで、元の執筆者の思惑と違っても構わんだろうし。

46 :名無しさんだよもん:01/12/22 15:58 ID:QpKl9aRs
これがあがってたら間違いなくハラダVS麻枝戦は勝てたろうに…
惜しまれる。

しかし過ぎたこと言ってもどうにもならん。
何より熱い。マンセー。

47 :R:01/12/22 23:12 ID:6DefUydt
久しぶりですね。同時に復活おめでとうございます!
ここ近頃書いていないのは社会人としての生活が忙しいのと+多少の手詰まりを
感じてしまったので・・・
(やはり葉以外は情報がないので表現に限界を・・・)
とりあえず、孤軍奮闘的な10月を超えてまた活性したことは喜ばしい限りです。
また、暇ができたら書きますね。

44さんへ>
誰がかいてもいいと思います。俺も最初からって訳じゃないですし・・・
大いに盛り上げてくださいませ。

48 :名無しさんだよもん:01/12/23 17:13 ID:GgzjJBu1
今回の新作、誰彼編の「三人目の防衛者」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/974/974402008.htmlの413-421)
を思い出したよ。久弥と行動がかぶる麻枝萌え。
やっぱ麻枝を立ちなおさせるのは、久弥であってほしいな。
俺の中じゃこの二人は、「振り返れば奴がいる」の司馬と石川みたいな関係だから。
(ちなみに涼元ちんは中川部長。)

49 :名無しさんだよもん:01/12/23 18:08 ID:UrG+9OUS
最後刺されて終わりですか?(w

50 :名無しさんだよもん:01/12/23 18:36 ID:GgzjJBu1
>49
刺す役はもちろん超先生で(w

51 :名無しさんだよもん:01/12/23 21:14 ID:I+XyNEVC
今ようやく誰彼の葉鍵編を読み終わったところ
にしても、永遠の遁走曲篇がdat落ちしていることが心底悔やまれる
…鬱だ

52 :ん? :01/12/23 22:41 ID:BLLzlvox
これか? >>51
Leaf&Key仮想戦記〜永遠の遁走曲篇〜
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/989/989927173.html

53 :名無しさんだよもん:01/12/23 23:05 ID:I+XyNEVC
>>52
おぉ、神よ
マジで感謝
今から読みまくりますage

54 :44:01/12/25 01:23 ID:FIEO1cYe
やっぱ無理だ……書けないっす(;´Д`)
もう少し精進する事にします。

55 :名無しさんだよもん:01/12/25 02:53 ID:z5ThiQix
がんばれ

56 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:12 ID:G+WQnEiE
「あ、それも包んでください」
 クリスマスも終わり、ようやく歳末の雰囲気も色濃さを増した街で、吉沢務はケーキ屋
の店員に注文を付けていた。クリスマスにケーキを食べるのは馬鹿馬鹿しいが、値段の
安くなった売れ残りのケーキを買うのは経済的だ、というのが吉沢の合理性だ。
 紙製の箱に色とりどりのケーキを詰めてもらい、吉沢は店を出た。冬の空気は刺すよう
な冷たさを増しているが、歳末独特の慌しい熱気がそれを吹き飛ばしている。世間一般
のタイムスケジュールからはいささか逸脱した身ではあったが、年の瀬ともなればある種
の感慨に浸る自分がいることに、吉沢は気が付いた。

 多くの人間と出会い、そして同じだけ多くの別れを体験してきた。悲嘆に暮れる時も
あったし、憤怒に打ち震える日もあった。だが悲しみも怒りも過ぎてしまえば思い出の
アルバムを飾る、貴重な写真だ。荒波のように起伏に満ちた日々が、吉沢に年不相応な
達観を与えていた。

57 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:12 ID:G+WQnEiE
 木の葉を巻いて、風が舞う。冷たさに肩をすくめると、人々の間を縫って足早に帰路
を急いだ。男達の怒鳴り声が人ごみの中から響いてきた。気ぜわしい年末にありがちな
若者達の他愛も無い衝突だろう。野次馬根性で見物する気もなかったが、声のした方角
が丁度帰路と同じ方角だったため、吉沢は自然と近づくことになった。

 想像を超えた大喧嘩だった。十人はいる。道端に転がり、悶絶している男達も既に
数人いた。とばっちりを食うことを怖れた群集が輪を作ってその有様を傍観している。
吉沢は輪の中に入り、観客の一員になると、驚いた。
 喧嘩に参加している男達は優に十人を超えていたが、相手は一人だったからだ。男達
は十人がかりでたった一人を相手にしていることになる。地面に寝転んでいる若い男達
もその仲間だとすれば、押されているのは十人の側なのだろう。事実こうしている
今でも、また一人叩き飛ばされ、地面を這っている。
 内心舌を巻きつつその光景を眺めていた吉沢だったが、たった一人で大立ち回りを
演じている人間の顔を見ると顔色を変えた。遠巻きに輪を作る人ごみをかき分け、騒動
の中心に駆け寄った。

58 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:13 ID:G+WQnEiE
 義侠心などではなかった。正義感や公徳心などでも勿論ない。そうしたものから最も
かけ離れた人間が今の自分だ。鏡に映った自分を殴っているのと変わらない。
 そう思いながら、麻枝准は懲りずに掴みかかってくる若者の鼻っ柱を力いっぱい殴り
つけた。潰れたような悲鳴をあげ、若者が地面に転がる。麻枝を取り囲んでいる男達
は予想外の展開に色を失った。

 この日も、麻枝は当てもなく夜の街をさまよっていた。外出しても行く先などあり
はしなかったが、家の中でどうしょうもない自己嫌悪に苛まれるよりはましだった。
 道に溢れる人に半ば辟易しながらも、ふらふらと歩き回る麻枝の目の前で若い男達
が一人の女に絡んでいた。よくある光景だ。怖い物知らずの若者達は、自分達に手に
入らない物などないと自信満々なものだ。かっての自分がそうだったように。
 麻枝は関わり合いを持つまいとその場を離れようとしたが、絡まれた女の悲鳴が
聞こえると怒りがこみ上げてきた。力ずくで女を手込めにしようとする男は許しがたい
卑劣漢だ。自分にそれを怒る資格などないことは分かっていたが、それだけに尚更
怒りを抑えることができなかった。
 遠巻きに眺める群集をすり抜け、麻枝は若者達に近づく。数人程度であればハッタリ
の一つでもかませばどうにでもなる。そう考えていたのだが、若者達の交友関係は
思ったより広かった。いつのまにか麻枝は十人を超す男達に取り囲まれていた。

59 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:14 ID:G+WQnEiE
 群れをなさないと啖呵も満足に切れない街のチンピラと麻枝とでは勝負にならない。
仲間の半数を倒され、若者達は恐慌を呈し始めていた。正義漢ぶった勘違い野郎を
袋叩きにするはずだったのに、逆にこちらが叩きのめされそうになっている。若者
の一人がズボンの後ろポケットからナイフを取り出した。震える手で柄を握り、刃を
麻枝に向ける。安っぽい加工の施された刃の表面がネオンの光を反射してきらめいた。
 刃を向けたまま麻枝に突進しようとした若者は、何者かに背中から蹴りを入れられた。
勢い良く吹き飛ばされ、麻枝の足元まで転がり失神する。
「こんな所で何遊んでいるんだ、麻枝!」
 自分の名を呼ぶ声に反応し、振り向くと吉沢が片手にケーキ屋の紙箱を抱えながら
若者に蹴りを入れていた。思わず叫び返す。
「吉沢さんこそ何でこんな所にいるんですか!?」
「俺の家が近くにあるからだ。それより、このガキどもといつまで遊んでいるつもり
だ? そろそろ警察が来てもおかしくないぞ」
 ケーキの箱を大事に抱えながら、吉沢は殴りかかる若者達を足であしらっている。
吉沢の言葉の通りに、パトカーのサイレン音が近づいてくるのが麻枝の耳にも聞こえた。
「逃げるぞっ、麻枝!」
 吉沢に腕を掴まれ、麻枝は引きずられるようにして喧騒の中心から逃走した。

60 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:15 ID:G+WQnEiE
「……ったく、何あんなガキ相手に本気になっているんだ。大人気ない」
 部屋の丁度中心に置かれたこたつの上にケーキの紙箱を置きながら、吉沢は呆れ
果てる。それには応えず、麻枝は所在なげに吉沢の部屋に立ち尽くしていた。
 ほこり一つなく整理整頓された部屋は、無機質な冷たささえ感じさせたが、一角に
置かれたピアノが吉沢の人となりを主張しているように見えた。
「そんな所に突っ立ってないで、座れ。でかい図体が目障りだ」
 麻枝は黙って腰を下ろす。吉沢は食器棚から二つ湯のみを取り出す。ポットから常時
沸かしてある熱湯を湯のみに注ぎ、茶を点てた。
「ケーキしか食うものはないんだが、まぁ食いたければ食え」
 湯気を立てている湯のみをこたつの上に置きながら、吉沢も腰を下ろす。
 麻枝は何も語らず、沈黙を貫いている。吉沢も自ら話し掛けようとはしなかった。
 こたつの上で二つの湯のみが白い水蒸気の煙を吐き出している。言葉で埋めることの
できない空間が、麻枝と吉沢の間にかって存在した軋轢を物語っていた。

「……Tacticsは辞めたんですか、もう」
 ぽつりと麻枝が口を開く。湯のみを片手にケーキを食べていた吉沢は、事も無げに答えた。
「あぁ、色々とやってはみたが、どうにもならなかったな。最後は依頼退職だ。クビだよ」
 平然と答えてはいたが、数え切れない程の辛酸を舐めつくしたはずだった。麻枝達主要
メンバーを一度に失い、そこからなおTacticsを回復させようとあらゆる努力を試みながら、
結局は徒労に終わったのだ。そして石で追われるように追放された。
 その原因を作ったのは他ならぬ麻枝である。吉沢の現在の苦境は麻枝の離反が発端で
あった。
「出入りの激しい世界だ。クビになったからといってどうということもない。商売になる
ネタさえあれば、またいくらでも出直せるさ」
 吉沢はどこまでも気楽な調子で言う。

61 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:15 ID:G+WQnEiE
「吉沢さんなら……どこに行っても通用しますよ」
 力無い麻枝の言葉に、吉沢はからからと笑ってやり返す。
「それならkeyに音楽屋としてでも拾ってもらうか。お前のコネで馬場社長にねじ込めないか?
こう、ぐいっと」
 吉沢は拳を握り、ねじるようにして麻枝の胸元に突き出す。麻枝は何も答えない。
吉沢の軽口にも何の反応も示さず、俯いたままの麻枝を見て、頭を掻いた。
「お前なぁ、色々あるんだろうが、お前がそんな辛気臭いことでどうする。それでも
keyのチームリーダーか?」
「……もう、違いますよ」
 そう、自嘲した。吉沢はその様子にただごとではない何かを感じ、麻枝の言葉を待つ。
お互いに違う道を歩んだ空白の時間を埋めるように、麻枝は訥々と言葉を繋いでいく。

 樋上いたるを切ろうとした上層部に反発し、Tacticsを飛び出した日の決意。『Kanon』
で勝ち取った名声、失った同僚。新たな同士を得、身を削るようにして創り上げた『AIR』。
 時には帷幕から指令を送る指揮官のように、時には前線で泥にまみれて銃弾の雨の中
を這いずり回る二等兵のようにkeyを守り、戦い、育ててきた一人の男の歴史が語られて
いく。
 そして最後に、keyに居場所を失い、こうして独り彷徨っている今を伝えた。
「俺は一体今までなにをやってきたんですか」
 最後の言葉は、殆んど泣かんばかりにして言った。

62 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:16 ID:G+WQnEiE
 吉沢は何も言わない。何も言わず立ち上がり、部屋の片隅に置かれたピアノへ近づく。
鍵盤の前の椅子に座ると、静かにピアノを弾き始めた。吉沢の指が鍵盤に触れると、
手入れの行き届いたハンマーが弦を叩き、音色を発する。吉沢の指の動きに応えて、
弦は音を奏で、曲を紡いだ。
 奏でられる音楽は、麻枝のよく知っているものだった。いや、よく知っているという
だけでは不十分だった。今、吉沢の弾いている曲はかって麻枝自身が生み出した曲だったからだ。

 輝いたあの季節を懐かしみ、最後まで笑っていたあの子供達を慈しみ、届かないあの
飛行機雲を追いかけた、過ぎ去りし夏の面影を麻枝は伝えようと願ったのだ。五線譜
に書き写した三分足らずの音の世界に全てを託して。

「『夏影』か。いい曲だ」
 ピアノを弾きながら、吉沢は短く呟く。指が静かに鍵盤に触れると、音色は部屋を満たした。
その音色が乾いた心に沁み込むようで、麻枝は胸が潰れそうになった。麻枝を憎んでいる
はずの吉沢が自分の楽曲を奏でていることが、道を分かったはずの吉沢が今なお麻枝の
想いを汲もうとしてくれていることが痛みを伴って麻枝の心を締め付けた。

 麻枝は両手で顔を覆った。泣いた。声を洩らさず、こみ上げる嗚咽を懸命に押し殺して、
それでも涙はとめどもなく頬を濡らした。そんな麻枝に、吉沢はただピアノを弾き続ける。
 同僚への不満、周囲への憤懣、そして自分への嫌悪が今、涙とともに洗い流されていく
のを麻枝は感じていた。

63 :名無しさんだよもん:01/12/25 09:46 ID:mTLBntbC
キタ━━(゚Д゚;)━━!!!!!!!!!!!!!!!!!

64 :名無しさんだよもん:01/12/25 11:13 ID:HS7iIxEP
……泣いていいですか?

なんかスゲェ、涙腺直撃っす。

65 :名無しさんだよもん:01/12/25 16:30 ID:W9SFkcSL
ボス、かっこよすぎイイ!(・∀・)

66 :名無しさんだよもん:01/12/25 17:26 ID:ot8f15qn
YETボスサイコー。

67 :名無しさんだよもん:01/12/25 19:09 ID:bagig9YQ
ボス……本物はエレクトーン11級なのに(w

68 :名無しさんだよもん:01/12/25 19:21 ID:0IXgD4j4
か、かっこええ……。

69 :名無しさんだよもん:01/12/25 19:47 ID:vitVLNvD
ボス11級って…
普通こういうのって10級から始まって9→8→って進級するよね?
まあネタかな。
ヤマハエレクトーンのホームページ
ttp://www.yamaha.co.jp/product/el/

70 :名無しさんだよもん:01/12/25 20:42 ID:lOWKxE/i
>67
激しくワラタ

71 :名無しさんだよもん:01/12/25 21:08 ID:Q9KI19xe
感涙号泣age

72 :名無しさんだよもん:01/12/25 23:37 ID:XTRvizVy
ホンキでナケタ…

73 :名無しさんだよもん:01/12/26 00:17 ID:rPwufsfB
この辺の事情を読んだことある者は尚のこと泣ける。
マジでイイ!(・∀・)

>>69
詳しい話は忘れたけど、ボスがエレクトーン11級ってのは実話だったはず。

74 :名無しさんだよもん:01/12/26 01:03 ID:XPgCVaJR
>>69
とった級がネタかどうかは知らないけど
「Y」AMAHA 「E」LEC「T」ONE 11級
略してYET11なのはホントの話。
大昔の話らしいけどね。
ついでにボスは今でも楽器はひけないらしいです。

75 :名無しさんだよもん:01/12/26 14:52 ID:5cDbrxmW
うう……やっぱ及ばない……ここまで差があるのか……
なんで涙が溢れてくるんだよ……吉沢さんウワァァァァン!!

76 : :01/12/26 14:59 ID:KVr+7MlW
 クリスマスが終っても、麻枝は吉沢に部屋に入り浸っていた。
「おい、会社のほうはいいのか?新作の制作が佳境に入っているころじゃないの
か?みんなも心配しているぞ」
「いいんですよ、会社なんて。僕がいなくても他のメンバーで十分やっていけま
すよ。今頃、ぼくの心配なんかより、コミケのことで頭がいっぱいですよ…」
 クリスマスの晩、不満憤懣そして自分への嫌悪が吉沢の演奏によって洗い流さ
れたとはいえ、いったん飛び出した麻枝は引っ込みがつかなくなっていた。吉沢
はそんな煮え切らない麻枝を怒鳴りとばしたい気持ちだったが、ここで強圧的な
態度をとっても意固地になるだけだろう。そこでPCを起動し、あるところにメール
を出し、翌日、電話でコンタクトをとった。と、またも麻枝が部屋に入ってきた。
「ん、なにしていたんですか、吉沢さん」
「うん、まあ再就職活動といったところだ。フリーではさすがに限界を感じてき
たからな」
「ふーん。ぼくはフリーのほうがいいと思うけどなあ。で、どうなんですか」
「急な話だが、年明け早々にも来て欲しいそうだ」
「どこなんですか?」
「KEYだよ」
「なんですか、それ非道いじゃないですか!ぼくの気持ちを知ってるくせに…!」
「麻枝、人間は自分を必要としてくれるところに行くものだ。KEYはオレの力を必
要としてくれている。それだけだ」
 麻枝は、吉沢のその言葉が終わるか終わらないうちに部屋を飛び出しいった。

77 : :01/12/26 15:00 ID:KVr+7MlW
 年が明けて、KEYの開発室。仕事始めの日である。麻枝が抜けたことで新作の制
作は停滞していた。年末ということもあってか、今まで制作状況の確認と来年のス
ケジュールの調整、コミケなどのイベントで麻枝が抜けたことを忘れようとしたが、
今までリーダーだった麻枝がいないことによる停滞は隠しようがなかった。
 と、開発室に社長が入ってきた。年始の挨拶かと思ったが、社長は一人、男を伴っ
ていた。ほとんどのメンバーには旧知の顔だった。
「あー、今年もよろしく。ところで、新しい仲間を紹介しよう。知っている人もい
るだろうが、吉沢務君だ。彼にはいままでの経験を生かして、プロジェクト全体を
見てもらうつもりだ」
「社長、リーダーは麻枝君のハズでしょう。どういうつもりなんですか!」
しのり〜が声をあげる。
「いや、しかし麻枝君にはメール、電話をしても連絡がつかんのだよ。とりあえず、
有給扱いにしているが、それもいずれ無くなる。雑誌、インターネットで発表した
からにはこれ以上の停滞は許されん」

 その日から、吉沢は精力的に動いた。涼元らの初顔合わせのメンバーともすぐに
うち解け、旧知のメンバーとはわだかまりを残しつつも、制作はいままでの停滞を
取り戻すかのように、いやそれ以上のペースで順調に進んだ。麻枝が担当するはず
だったシナリオ以外は。
「渚シナリオなんですが、私か魁さんが書くんでしょうか。それとも吉沢さんが?」
「うん、まあ、その部分は考えていることがあるんだ」
「それでも他ルートのシナリオを重なる部分がありますし…」
「そこのところは適当に、というか、ちょっと待っていてくれよ」
 涼元は少し不満だったが、そこで引いた。受賞歴もあり、単行本も出したことも
ある作家とはいえ、ゲームの制作に参加したのはAIRしかない涼元には、数多くの
作品を制作した吉沢に教えられることが多かった。しかし、制作が進み、ゲームの
全体像が見え始めた今になっても麻枝が担当するはずだった部分の担当を割り振ら
ない吉沢の態度は不自然だった。

78 : :01/12/26 15:01 ID:KVr+7MlW
 そして、発売日が決まり、マスターアップの期限も決まった。が、その時を境
に吉沢が豹変する。突然の仕様変更、決定稿のはずの原画へのダメ出し、折戸
が作曲した曲は原型を無くしてしまうほどに編曲した。そして相変わらずメイン
となる渚シナリオには手もつけていない状態であった。制作が大混乱に陥り、休
日出勤の連続であった。スタッフの怒りが爆発しようとしていた日曜、休日出勤
で朝一番で出勤したみきぽんがPCを立ち上げると、大量のウンコフォルダが!他
のスタッフのPCも同様だった。そしてメールサーバには吉沢からのメッセージが
残されていた
「ハッハッハッ、誰がテメーらの青臭ぇゲーム作りなんか協力するかよ。最初っか
らこうして、混乱に陥れるのが目的だったんだよ。思い知ったか。これであのとき
の復讐がようやく果たせて清々したぜ。俺はこれからバハマでバカンスを楽しむ
とするか。じゃあな、ハッハッハッ」

79 : :01/12/26 15:03 ID:KVr+7MlW
 一方、時を同じくして麻枝は吉沢の部屋を訪ねていた。麻枝は吉沢の部屋を飛
び出して以来、荒んだ生活を送っていたが、さすがに吉沢にだけは謝っておこうと
思った。しかし、部屋はもぬけの殻だった。
 正確には部屋の中に古いPC98がポツンとあった。起動するとガチャンガチャン
とフロッピーディスクにアクセスする音が部屋に響いた。MS-DOSが立ち上がると、
AUTOEXEC.BATで自動的に演奏ソフトが起動し、今では携帯電話の着メロにも劣る
FM音源で曲を奏でた。これは、青空!?…そして麻枝はフロッピーディスクの挿入
口に挟まれていた手紙を発見する。

「麻枝、なにも言わずにKEYの開発室へ行け。そこにはお前を必要としてくれる人
たちがいる。人間は自分を必要としてくれる人のために生きるんだ。俺はしばらく
旅に出るよ。ゲームの制作を大混乱に陥れた張本人とお前が仲良くしているんじゃ
あ、お前まで疑われるからな。長い旅になるだろう。けれどお前のことは忘れない。
いつかどこかで出会うかも知れないけどな。体に気を付けろ。じゃあな 吉沢」
 吉沢さん、オレのために憎まれ役を…麻枝は静かに手紙を読んだ。二度も三度も
繰り返し読んだ。手紙が涙でぐしゃぐしゃになり、文字が判読できないほど滲んで
いた、それでも麻枝は手紙を読み続けた。

80 :名無しさんだよもん:01/12/26 15:48 ID:G4/xA3O2
なんつーか・・・えらく展開がはやいな・・・
まぁリレー形式だからしょうがないけど。

81 :名無しさんだよもん:01/12/26 22:01 ID:1LqI8GNy
…つか、コレって泣いた赤お(以下略)

82 :名無しさんだよもん:01/12/26 22:17 ID:Z6qBdrfm
…つか、クラナド発売まで時間飛ばしたらあかんやろ…

このスレ、リレー縛りきつくないよね?同時並列世界だよね?
前もそんな感じだったし

83 :名無しさんだよもん:01/12/27 02:10 ID:NBLS1P8o
>82
ええ、また別の展開を書かれるのならそれも大歓迎です。

84 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:04 ID:DpV0X/wK
「ぐぁ……なんちゅう人の数だ」
 立錐の余地もないほどに密集した人ごみに巻き込まれながら、麻枝准は呻き声をあげた。
 ここ有明の地は一年に二度だけ、日本で最も多くの人が集まる祭りの場と化す。
 コミック・マーケットと呼ばれるその祭典の会場に、麻枝は生まれて初めて足を運んで
いた。会場は人々の雑然とした熱気に満ちて、季節が冬であることを忘れさせた。
 人ごみに当てられ、乗り物酔いのような不快感が胃の奥からこみ上げてくるのを感じ
ながら、麻枝は自分にこの場に足を運ぶことを勧めた男を少しだけ恨めしく思った。

「まだこの業界でやっていく気があるんだったら、コミケにでも行ってみろ。会社の中
からだけでは見えないものが見えてくるぞ。今の麻枝に必要な人がいるかもしれない」
 吉沢の言葉だった。あれだけのことをしてしまった以上、今更keyに戻る訳にはいかない。
 だがあの日、自分でも驚くほどの涙を流した後、一つの真実が残ったのだ。
「まだ、何かを創りたい」
 灰燼と化した未来の残骸の中に、崩落した過去の廃墟の底に見出した、たった一つの夢
の絵姿。心の奥の炎は今なお消えずに、麻枝の背を押している。その火が消えるまでは、
まだ終われない。

(だからと言ってこれではたまらんぞ。そもそもコミケなんか……)
 立ち止まることを許さない人々の濁流に飲み込まれつつ、麻枝は内心愚痴った。
 大学を卒業してすぐにプロとしてキャリアを積んできた麻枝は、同人活動というものを
今までに一切行なった事がない。18禁ゲームの業界では同人活動をステップにプロとして
活躍する者も少なくないし、プロとして活動する傍ら同人活動を行なう者も多い。
 だが麻枝のプロ意識はそうした余暇としての創作を許さなかった。同人創作を商業創作
の下に置く意識が麻枝にはある。ここに自分の必要とするものがあるとはとても思えなかった。

85 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:05 ID:DpV0X/wK
 人ごみに押し出され、弾き出され、ふらふらになりながら麻枝はようやく人気の少ない
ところで一息をついた。深呼吸をして、新鮮な空気を肺に送り込む。あくびをして大きく
背伸びをした麻枝のコートの裾を何かがくいくい、と引っ張った。
「んが?」
 口を大きく開いたまま、麻枝は疑問の意を発する。引っ張られたコートの裾に目をやる
と、少女が涙目でこちらを見上げていた。
 小さな少女だった。幼女と言ったほうがいいかもしれない。麻枝の腰のあたりの高さ
から麻枝の顔を見上げている。黄みがかったブラウンのダッフル・コートに身を包み、
ミトンをはめた小さな手で麻枝のコートの裾を離さない。肩にかかる程度に切り揃え
られた髪につけた赤いカチューシャが一層幼い印象を与えた。

「どうした? ガキの頃からこんな所に出入りしてたら、ロクな大人になれないぞ」
 少女はぷるぷるとかぶりを振る。
「……おかあ……さん」
 大きな瞳から涙がこぼれる。麻枝は体を屈め、少女の目線と同じ位置で話し掛けた。
「もしかして迷子になったのか?」
 カチューシャが縦に揺れる。麻枝は呆れ果てたように深々とため息をついた。
「……ったく、こんな所に子供を連れてくる親も親だな。何か間違いでも起こったら
どうするつもりなんだ」
 しゃがんだ体勢のまま、少女に背中を向ける。
「ほら、乗れ」
 麻枝の言葉に少女はどう応えていいか分からず、立ちすくむ。麻枝は業を煮やしたよう
に続ける。
「お母さんを探すんだろ。俺が肩車してやるから自分で探せ」

86 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:05 ID:DpV0X/wK
 長蛇の列をなしていた客のピークも一段落を迎え、久弥直樹はようやく人心地をついた。
今回初めて出展した自作の小説の売上は上々だった。key時代に得た支持層が主な客層
だったとはいえ、第二の人生の門出としては悪くない。この調子で地道に活動を続けて
いくことができれば、それに過ぎるものはないように思えた。

 二年前keyを離れて以来、久弥は潜伏を余儀なくされていた。モチベーションの低下
もさることながら、離れてなお巻き込まれるkey絡みのトラブルに振り回され続けた。
だが波乱と動揺を繰り返したkeyも今ではすっかり安定を取り戻したようで、新作の発表
も行なわれている。麻枝達の前途は洋々に見え、久弥は安堵した。
 次は自分の番だ。key時代の過去を捨て、これからの人生を自分の力で切り拓いて行く
んだ。そんな決意に心を引き締めた。

 販売スペースには客の姿はもうない。知り合いのサークルに顔を見せに行こうと、
売り子用の椅子から立ち上がった久弥に、見知らぬ女性が声を掛けてきた。
「あ、あの。すいません」
 女は頬を赤らめ、上気した様子で久弥に話し掛けてくる。どもった話しぶりから、
彼女が相当に動転していることが伝わってきた。
「ここに女の子が来なかったですか? 私の娘なんです。背はこのくらいで」
 そう言いながら自分の胸の少し下の高さに手の平をかざす。
「いえ……そんな娘さんは来てはいませんけど」
「そうですか……こんな人の多い所で迷子になって、一体どうしたら……」
 女は半ばパニックに陥っていた。

87 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:06 ID:DpV0X/wK
「落ち着いてください。ちゃんと探せばすぐ見つかりますよ、僕も手伝います」
 久弥の言葉に、女は辛うじて平静を取り戻す。言い聞かせるように久弥は続けた。
「それで、その娘さんはどんな格好をしておられるんですか? 目立つ特徴とかが
あれば教えてください」
 女は顔を上げ、少しだけ嬉しそうに口を開く。
「あゆちゃんの格好をしています」
「あゆちゃん?」
 おうむ返しに返事する久弥に、女は説明する。
「はい、『Kanon』のあゆちゃんです。とても可愛いんで、久弥さんにも見てもらおうか
と思ってたんですけど……」
 寂寥感が小さな棘のように、久弥の心を刺す。二年以上も昔に自分の創った物語の
キャラは未だに愛されている。その事を嬉しく思う反面、もうあの時は帰ってこない
のだ、ということを思い出させられた。

88 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:07 ID:DpV0X/wK
 遠目には人の海の上を少女がサーフィンしているように見えるかもしれない。
 麻枝の肩車に乗った少女は人ごみから体一つ分だけ浮いていた。
「おーい、見つかったかー」
 頭上の少女のバランスを崩さないように慎重に歩きながら、麻枝は問う。
「ううん……いない……」
 頭の上から声がする。麻枝はため息をついて子供連れの女性のいそうな所を歩き回った。

 くいくい、と髪の毛が引っ張られた。
「お、見つかったか?」
 ようやくこの苦役から解放されると思い、声を弾ませる。だが、頭の上からは期待
した言葉は降ってこなかった。
「トイレ……」
 消え入りそうな声が頭の上から聞こえる。その言葉の意味を考えた麻枝は、自分が今、
絶体絶命の死地にいることをすぐに悟った。
「トイレって、しょんべんか? 大きい方か? いやどっちでもいい。っていうかよくないっ」
 肩車に乗った少女の体が震えている。
「ぐぁっ、首を締めるなっ」
 足を閉じ、下半身に力を入れて懸命にこらえようとしているようだった。足を閉じよう
とすれば必然的に麻枝の首を締めることになる。便意をこらえるには不向きな姿勢だ。 
「もうちょっと我慢しろ。すぐトイレに連れて行ってやるから、な?」
 だがコミケ会場を初めて訪れた麻枝が会場の地理に詳しい訳がない。しかもこの人ごみ
では周りの状況もよく見渡せない。
「うぐっ……」
 頭の上で呻き声が聞こえる。少女の震えは大きくなり、麻枝の髪の毛にぽたりと涙が
一滴落ちた。涙ならまだしも、あんなものを頭にぶっかけられてはたまったものではない。
「おわーっ! トイレはどこじゃーっ。トイレトイレトイレーっ!」
 麻枝の悲痛な叫びが、会場に響き渡った。

89 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:07 ID:DpV0X/wK
「おわーっ! トイレはどこじゃーっ。トイレトイレトイレーっ!」
 男の叫び声が久弥の鼓膜を震わせる。目の前の女もその叫びに反応し、声の聞こえた
方角を向いた。久弥と女が顔を向けたその先には、何故か人々の頭の上の高さに少女が
いた。
「あ、あそこです。あそこにいるのが私の娘です!」
 女が叫び、走り出す。久弥もそれを追い、販売スペースを飛び出した。
 人ごみをかき分け、少女のいた場所へ駆け寄る。
 偶然か、それとも必然か。
 久弥はそこで、もう出会うはずのなかった男と再開した。
 そしてそれは激動の新時代の、ほんの序幕にすぎなかったことを後に久弥は知る。

90 :名無しさんだよもん:01/12/27 09:11 ID:DpV0X/wK
>>76-80
ゴメン、分岐させて。最終的にはその結末になると思うんだけど、そこに
辿り着くまでの過程が書きたいんです。

91 :名無しさんだよもん:01/12/27 14:06 ID:HUy1hnNt
>>84-89
ぐぁー、続きが気になるー!

92 :名無しさんだよもん:01/12/27 14:11 ID:DBqzlEjQ
俺も気になる!特にょぅι゙ょの放尿シーンがっっ!!(w

93 :風呂っ子2号:01/12/27 19:58 ID:V3AJgFj6
(;´Д`)ハァハァ

94 :7つ ◆ffU3G94s :01/12/28 10:35 ID:/8rnyzXI
年末age アイモカワラズモエマス。

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